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東京地方裁判所八王子支部 平成11年(ワ)2128号 判決 2000年8月31日

原告

竹中里江

被告

西邦貴

主文

一  被告は、原告に対し、四九三万五四三三円及びこれに対する平成九年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一事案の概要

交通事故による損害賠償請求事件である。

主たる争点は、主婦であり、ホームヘルパーをしていた原告の休業損害額である。

第二原告の請求

被告は、原告に対し、五〇〇万円及びこれに対する平成九年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第三当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、平成九年六月三〇日午後五時四五分頃、自転車(以下、「原告自転車」という。)に乗って、東京都小平市上水本町四丁目一〇番交差点を西側から東側へ向けて直進中、東側から北側へ右折してきた被告の運転する普通乗用自動車(以下、「被告自動車」という。)に衝突された(以下、「本件事故」という。)。

被告には、右折時の安全確認を怠った過失がある。

2  本件事故により、原告は右足関節内骨折、左下腿挫創の傷害を被り、共立整形外科に次のとおり入通院した。

平成九年六月三〇日から同年八月一〇日まで 入院四二日

同年八月一一日から平成一〇年八月五日まで 通院

平成一〇年八月六日から同月一九日まで 入院一四日

同年八月二〇日から同年一二月二一日まで 通院

(右各通院期間中の実通院日数 二七日)

なお、平成九年七月一六日から同年一〇月二日までの八五日間固定装具(負荷装具)を使用した。

3  原告が本件事故により被った損害は次のとおりである。

(一) 合計 七二一万三四五八円

a 治療費 一六八万二七四〇円

b 交通費 六万〇〇二〇円

c 入院諸雑費 七万二八〇〇円(入院五六日、一日当たり一三〇〇円)

d 休業損害 二六三万一一三三円

原告は、主婦兼ホームヘルパーとして働いていたが、賃金センサス女子労働者賃金(四五歳)三六一万二一〇〇円(日額九八九六円)を基礎に計算する。

<1> 入院中は一〇〇%の休業損害 五五万四一七六円

入院五六日分 三六一万二一〇〇円÷三六五×五六

<2> 退院後、平成一〇年八月の再入院まで五〇%の休業損害 一八〇万六〇五〇円

三六一万二一〇〇円の五〇%

<3> 再退院後四か月は三〇%の休業損害 二七万〇九〇七円

三六一万二一〇〇円の四か月分の三〇%

e その他 二六万六七六五円

装具、自転車、ワンピース、ストッキング、靴、時計代

f 慰謝料 二五〇万円

被告は、近隣に居住しながら、謝罪もなかった。

(二) 既払額 二二二万八〇二五円

(三) 請求額 四九八万五四三三円

(四) 弁護士費用 五〇万円

(五) 以上合計 五四八万五四三三円

4  よって、原告は被告に対し、右損害額五四八万五四三三円の内金五〇〇万円及びこれに対する本件事故日である平成九年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  認否及び主張

1  1項は認めるが、原告にも前方不注視の過失があり、過失相殺率は一〇%である。

2  2項は認める。

3  3項(一)aの一六八万二七四〇円は認める。

4  3項(一)bの六万〇〇二〇円は認める。

5  3項(一)cの七万二八〇〇円は認める。

6  3項(一)dは否認する。五一万八九九九円が相当である。

(一) 休業損害はホームヘルパー一日の収入三〇七一円を基礎とすべきである。

原告の休業損害は、

<1> 本件事故の翌日の平成九年七月一日から同年一〇月三一日までは一〇〇パーセント

三〇七一円×一二三日=三七万七七三三円

<2> 平成九年一一月一日から平成一〇年一月三一日までは、主婦業程度の軽作業であれば部分的に就労可能であったから五〇パーセント、

三〇七一円×〇・五×九二日=一四万一二六六円

<3> 平成一〇年二月一日以降は、原告は通常の就労が可能であったから休業損害はない。

<4> 右<1>、<2>の合計五一万八九九九円

(二) 仮に休業損害につき、賃金センサス平均収入を基礎とするのであれば、平成九年賃金センサス第一巻第一表産業計、企業規模計、学歴計、女子労働者の全年齢平均賃金額(年収三四〇万二一〇〇円、日額九三二〇円)を基礎とすべきである。

これによる原告の休業損害は、

<1> 本件事故の翌日の平成九年七月一日から同年一〇月三一日までは一〇〇パーセント

九三二〇円×一二三日=一一四万六三六〇円

<2> 平成九年一一月一日から平成一〇年一月三一日までは五〇パーセント、

九三二〇円×〇・五×九二日=四二万八七二〇円

<3> 右<1>、<2>の合計一五七万五〇八〇円

7  3項(一)eの二六万六七六五円は認める。

8  3項(一)fは否認する。一四〇万円が相当である。

9  したがって、3項(一)の損害の合計は四〇〇万一三二四円である。

原告の一割の過失相殺をすると、被告が賠償すべき額は三六〇万一一九一円となる。

10  3項(二)の既払額が二二二万八〇二五円であることは認める。

11  そうすると、原告の3項(三)の請求額は、右9の賠償額三六〇万一一九一円から右10の既払額二二二万八〇二五円を差し引いた残額一三七万三一六六円となる。

第四当裁判所の判断

一  請求の原因1項は当事者間に争いがない。

なお、本件事故の発生につき、原告に過失相殺すべき過失があったと認めるに足りる証拠はない。

二  請求の原因2項は当事者間に争いがない。

三  請求の原因3項につき判断する。

1  同項(一)a(治療費一六八万二七四〇円)、b(交通費六万〇〇二〇円)、c(入院諸雑費七万二八〇〇円)はいずれも当事者間に争いがない。

2  同項(一)d(休業損害)につき判断する。

当事者間に争いのない事実、甲一三、一五、原告本人及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故当時四五歳の主婦で、かつ平成七年七月からホームヘルパーとして働いていたこと、本件事故により平成九年六月三〇日に入院し、同年七月四日に手術を受け、同月末日まで点滴を受け、同月一六日から同年八月一〇日の退院後の同年一〇月二日まで固定装具を使用していたこと、退院後は右足のギブスの高さに合わせた上げ底の靴を左足に履いた不自由な身体で、夫と子供二人の家事をこなさなければならなかったこと、平成一〇年八月六日から同月一九日まで入院して第二回目の入院をして、同月七日、内固定抜去術の手術を受けたこと、退院後、同年一二月二一日まで通院したこと、その間も事故前には戻らない身体で日常家事をこなさなければならず、またホームヘルパーの仕事ができるような状態ではなかったことが認められる。

右認定の事実によれば、原告の本件事故による休業損害は、原告の主張するように、平成九年の賃金センサス女子労働者学歴計(四五歳)年収三六七万二四〇〇円の範囲内である年収三六一万二一〇〇円(日額九八九六円)を基礎に、

<1> 入院(第一回四二日、第二回一四日、合計五六日)中は一〇〇パーセントの休業損害 五五万四一七六円

三六一万二一〇〇円÷三六五日×五六日=五五万四一七六円

<2> 平成九年八月一〇日の退院後、平成一〇年八月六日の再入院まで三六二日は五〇パーセントの休業損害 一七九万一二〇五円

三六一万二一〇〇円÷三六五日×三六二日×〇・五=一七九万一二〇五円

<3> 平成一〇年八月一九日の再退院後四か月は三〇パーセントの休業損害 三六万一二〇九円

三六一万二一〇〇円÷一二か月×四か月×〇・三=三六万一二〇九円、

右<1>ないし<3>の合計二七〇万六五九〇円と判断するのが相当である。

そうすると、原告が休業損害として主張する二六三万一一三三円は右損害の範囲内のものとして相当というべきである。

3  同項(一)e(その他二六万六七六五円)は当事者間に争いがない。

4  同項(一)f(慰謝料)につき判断する。

本件事故の態様、原告の被害の程度等を総合すれば、本件事故により原告の被った傷害に対する慰謝料は二〇〇万円と判断するのが相当である。

5  以上によれば、原告の本件事故による右2ないし4の損害の合計は、六七一万三四五八円ということになる。

6  同項(二)(既払額二二二万八〇二五円)は当事者間に争いがない。

7  以上によれば、原告の同項(三)の請求額は四四八万五四三三円となる。

8  同項(四)の、本件事故と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は四五万円と判断するのが相当である。

9  以上によれば、同項(四)の損害合計は四九三万五四三三円となる。

10  そうすると、原告の被告に対する本訴請求は四九三万五四三三円及びこれに対する本件事故日である平成九年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による民事遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。

四  よって、原告の本訴請求を、主文第一項掲記の限度で認容し、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂本慶一)

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